2020年05月11日

カルテと開示請求 第1回 カルテの性質

本日より「カルテと開示請求」シリーズを連続投稿させていただきます。
同シリーズでは、カルテ開示(診療録開示)の概要や方法、留意点について解説してゆきたいと思います。

第1回は「カルテの性質」として、カルテ(診療録)の位置づけについて言及してまいります。

(1)カルテとは


 「カルテ」とは、一般に医師が診療に際して作成する診療録のことをいいます。
 また、医師の記載する診療録のほか、検査記録や手術記録、看護記録、処方箋等を含む患者の治療に関して作成された文書を総称して「診療記録」(または「診療記録等」)といいます。


(2)カルテの医療上の位置づけ


 以前ではカルテは医師の備忘録にすぎないとされ、また治療の経過や病状も「知らしむべからず」といった意識のもと患者へは知らせないといった認識が一般的であり、カルテは開示されない、さらには積極的に開示すべきでないとされることが一般的でした。

 しかしながら、現代では患者と専門職である医師は対等なパートナーシップのもと協働して治療にあたる存在との理念が普及してきたことから、少なくとも総論としては「カルテは患者と医師の共有資産である」との認識となっているようです。日本医師会においても、カルテ開示に関するガイドラインを定め、原則としてカルテは開示すべきものとしています(日本医師会 診療録の提供に関する指針:http://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/000318.html)。


(3)カルテの法律上の位置づけ


@ 医師法上の地位
 医師法においては、医師の義務として、
 1)診療を行った際の診療録(=カルテ)への記載義務
 2)5年間の保管義務※
 が定められています。
 ※病院または診療所に勤務する医師のした診療にかかる診療録については、管理者が保管義務を負います。

A 個人情報保護法上の地位
 カルテは、個人情報保護法上の個人情報および個人データに、医療機関は個人情報取扱事業者に該当します。そして、個人情報取扱事業者は、本人の請求により個人情報を開示する義務を負いますので、本人にカルテを開示する義務があるといえます。
 個人情報保護法上の位置づけについては、次回以降の記事で詳しく解説します。

B 診療契約上の地位
 いわゆる医師による診療は、法的には「準委任契約である医療契約に基づく役務の提供」とされていますが、準委任契約の性質として委任者(医療契約の場合は患者)への顛末報告義務が生じます。
 そして、顛末報告義務の実施として、カルテ開示を行うべき場合があるとされています。ただし、顛末報告は診療の状況や患者と医師の関係性等に鑑み適切な方法が選択されるべきで、常にカルテ開示が要求されるものではない、というのが通説です。
 診療契約上の地位についても、次回以降の記事で詳しく解説します。


(4)結論


 医療上の観点からも、法律上の観点からも、カルテ(診療録)は原則として開示すべきといえます。
 次項以降、それぞれの論点について詳しく解説してゆきます。


参考文献


加藤良夫『実務医事法講義』民事法務研究会、2005
高橋譲編『医療訴訟の実務』商事法務、2013

次回→カルテと開示請求 第2回 カルテ開示の法的構成(1)個人情報保護法等に基づく開示
posted by KINO Ryosuke at 23:21| Comment(0) | 個人情報