2020年05月24日

カルテと開示請求 第3回 カルテ開示の法的構成(2)顛末報告義務に基づく開示

 前回の「(1)個人情報保護法に基づく開示」に続いて、今回は「(2)顛末報告義務に基づく開示」について扱います。

1.診療契約と顛末報告義務

 一般にわたしたちが「診察」や「診療」と呼んでいる医療機関での医師による治療は、法律上は「診療契約」となりますが、「診療契約」は「準委任契約」という契約類型のひとつとなります。

 準委任契約は、委任者が受任者に一定の行為の実行を委任する、という形の契約です。
 患者が委任者、医師が受任者であり、患者(委任者)が医師(受任者)に診療という行為の提供を求める、という関係となります。

 そして、準委任契約の受任者(診療契約では医師)には、委任者(診療契約では患者)に委任された行為の結果につき報告する義務(=顛末報告義務)があるというのが通説です。他人に仕事を依頼した際、通常その結果について報告を求めるでしょうが、これを法定したものと考えれば理解しやすいでしょう。


2.顛末報告義務によりカルテの開示を求めうる場合

 ただし、顛末報告義務の実行は、必ずカルテの開示に依るべき、とされているわけではありません。その方法は、個別の事情に応じて適切なものが選択されるべき、とされており、カルテの開示から口頭での説明まで幅があります。

 そのため、一般に医療ミス(医療過誤)があったような場合や、既に患者と医師の関係が破壊されているような場合はカルテの開示まで認められる場合が多いでしょうし、まだ治療が継続しており、口頭でも充分に説明が可能であるような場合はカルテ開示は認められない可能性が高くなります。


3.本人以外からのカルテ開示

 また、個人情報保護法上の開示請求権者(開示の請求をできる者)は「本人」に限られていることから、例えば亡くなった家族のカルテの開示を個人情報保護法に基づいて行うことはできません。
 しかし、学説においては、患者の家族は本人と医療者(医師等)の診療契約の付随的義務として顛末報告義務に基づく説明を受ける権利を有するとの見解が存在し、厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」においても遺族への開示を原則として応ずべきとしていることから、顛末報告義務に基づいてカルテの開示を請求できる場合があります。

次回は「(3)証拠保全手続きによる開示」を扱います。
posted by KINO Ryosuke at 23:00| Comment(0) | 個人情報