2020年06月09日

カルテと開示請求 第5回 カルテ開示にかかる手数料 前編 概要および国公立病院の場合

 今回はカルテ開示に要する手数料につき詳細に解説してゆきます。

(1)概要

 個人情報保護法に基づく開示手数料については、明確な法律の定めはありません。

 個人情報保護法では、「個人情報取扱事業者は(中略)実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなくてはならない。」(33条2項)とされていますが、具体的な規定はありません。
 
 また、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」にても、「具体的な金額は、個別の事例に応じて判断が異なるものであると考えます」とされているのみで、具体的な金額の目安や上限額等については定められていません。

 なお、開示手数料は一般に
 (1)開示請求手数料(開示の可否・分量関わらずに一律請求されるもの)
 (2)開示実施手数料・複写料(枚数等に応じ、いわゆる複写の実費として請求されるもの)
 に分けられています。

 現実には、開示手数料の水準は国公立病院および民間病院にて大きく異なりますので、2つに分けて解説したいと思います。今回は国公立病院を取り扱います。

(2)国公立病院における開示手数料

 いわゆる国立病院、自治体の運営する公立病院、国立大学の附属病院などです。なお、2020年現在、国立病院は独立行政法人国立病院機構などにより、国立大学付属病院は国立大学法人により運営されているため、独立行政法人等個人情報保護法の適用対象となります。

 そして、開示手数料は独立行政法人等個人情報保護法の定めに基づき規定された各独立行政法人の規程等により決定されることとなります。

 例えば、国立病院機構東京医療センターの場合、
 ・開示請求手数料:300円
 ・開示実施手数料:
   閲覧の場合 100枚まで毎に100円
   写しの交付の場合 1ページにつき10円
   ※開示実施手数料は、いずれも300円を超えない金額については無料
 となります。
 なお、東京医療センターに限らず、独立行政法人国立病院機構の運営する病院はすべて同一の手数料となります。

 自治体の運営する公立病院の場合、国の行政機関でも、独立行政法人等でもないため、行政機関個人情報保護法または独立行政法人個人情報保護法は適用されません。しかし、一般に自治体は行政機関個人情報保護法に準じた個人情報保護条例を定めており、概ね国立病院等と同様の手数料で開示を受けることができます。

(3)金額の妥当性

 以下個人の主観となりますが、国公立病院における開示手数料の妥当性について検討したいと思います。

 診療録はまさに患者本人の情報であるとの理念からすると無料でもしかるべきとは思いますが、現実に診療録の開示に一定のコスト(印刷費、開示実施を行う事務職員の人件費)を要する以上費用を徴収することには妥当性があるものと思われます。

 そうすうと、現在の国公立病院で採用されている料金水準(開示請求手数料数百円、実施手数料1枚10円程度)は、開示請求者たる本人に過度な負担を課すべきでないとの規範と、現実に個人情報取扱事業者たる病院にコストが発生するとの事情の均衡との観点から、一応妥当なものといえるのではないでしょうか。
 
 特に、次回以降述べる民間病院の料金水準からすると大変良心的といえます。


 次回は民間病院編として、民間病院の開示手数料および開示手数料を巡る昨今の動向を扱います

参考

 国立病院機構 開示手数料について/開示実施手数料の額について/手数料の納付方法について
 https://nho.hosp.go.jp/disclosure/cnt1-0_000452.html
 独立行政法人国立病院機構の保有する個人情報の保護に関する規程
 https://nho.hosp.go.jp/files/000124885.pdf
 独立行政法人国立病院機構の保有する個人情報の開示等の手続に関する規程
 https://nho.hosp.go.jp/files/000042755.pdf
 厚生労働省・個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」「『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス』に関するQ&A(事例集)」(再掲)
 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines/#iryokanren
posted by KINO Ryosuke at 10:00| Comment(0) | 個人情報